読書空間
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よく遊び、よく遊べ!
詩人の旅 増補新版 田村隆一
30年ぶりの増補新版、 饒舌で、きらいじゃないです。軍歌のくだりは正直わかりません。何か屈折したものがありそうです。詩は端正です。今は観光地になっている隠岐、若狭、伊那、奥津、越前などを廻ります。
地上の旅以外にも、内面の旅がある。それを「遊」と云う。書物との出会い、知らないことを学ぶ。たとえば、戦前では「学に遊ぶ」と云った。留学とは云わないで「遊学」。遊そのものに、旅という意味がある。
あとがきにかえて -
ファイトレメディエーション
世界の樹木をめぐる80の物語 ジョナサン・ドローリ
ジュール・ヴェルヌの「八十日間世界一周」に倣ってロンドンから東へ、80の樹木をめぐる物語(名前の由来や生息地、他の生物との関係等々) 。DaysをTreesに変更した題も洒落ています 。
ルシール・クレールの挿画がすばらしい。人物の描き方に少し癖があって、最初ちょっと違和感がありました。各章の締めの一言がかなりぶっ飛んでいます。
セーブ・ブルーというニッケルを吸収する木がニューカレドニアにあって、植物のこれらの能力を使って汚染された土地を浄化する「ファイトレメディエーション」の技術が研究されているのを知りました。(写真はバオバブの木)
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うらない
占 木内昇
七つの物語が登場人物でゆるく繋がっていて、少しの前の時代設定と融合していい感じ。ちょっとしつこいところもありますが、まずは楽しめる”ホラー”です。
昔、木内昇は”のぼる”で男性だとばかり思っていました。関係ないけど。
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短いお話
月とコーヒー 吉田篤弘
24の短いお話、とるにたらないもの、忘れられたもの、世の中の隅の方にいる人たちの話とあります。過剰にならず、静謐だけど、なぜか心に沁みる話。
よく思いつくな思います。名前とかストーリーとか、個人的に「三人の年老いた泥棒」よかったです。装幀・装画・挿絵、言うに及ばず。
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俳句クロニクル
大岡信『折々のうた』選 俳句(二) 長谷川櫂編
一茶、子規、虚子、楸邨、龍太と続く近代俳句の編年史。加藤楸邨「牡蠣の口もし開かば月さし入らむ」につけた、大岡信「りんりんと鳴れ舌も潮も」すごい!
わかりやすくなったけれど、楸邨、龍太亡き後「現代の俳句は批評精神を失った末期的大衆俳句に陥っているのではないか。」という編者の総括は大きい。