読書空間
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事物をまるごと把握する
レンマ学 中沢新一
大乗仏教の縁起の論理を土台として、新しい「学(サイエンス)」を構築しようとするスリリングな試み。3か月かかってようやく読了。「チベットのモーツァルト」から追いかけて30年、私淑しているので公平な判断はできませんが、やっとここまで来たか(まだ第一部)という感じです。数学が苦手な私には「レンマ的算術の基礎」はお手上げです。
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魚は机を濡らす
歌集 月を食う 佐々木定綱
栞には、「自身の生きる肉声」とあるが、拙くても粗くてもいいけど、ほんとに「生きる肉声」なのか?ぶれない現実認識があるのか? 2回ぐらいでは、読んでもやっぱりわからない。いつかこの歌集の中の一首を暗唱する日が来るとは思わない。第62回角川短歌賞受賞。
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短夜や翼に変わるトタン屋根
連句日和 笹公人・矢吹申彦・俵万智・和田誠
3人、新年からは4人で巻いた7歌仙(仕舞屋・夏芝居・パノラマ島・牡蠣筏・みちのく・太陽光発電・トタン屋根)。
ルール(式目)がちょっと複雑で、つけるのはむつかしそう。連想を追っかけるのは楽しいし、解説を読むのも勉強になります。
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チベットとあだ名され
ツァンパで朝食を 渡辺一枝
チベットへ30年、はためくタルチョ、食・道具・民族衣装・家・道具・風土・祈り、目に映り心に触れたモノの写真。カメラまかせのオートフォーカスと謙遜されますが、その圧倒的な迫力、特に顔、顔が輝いています。チベットは広い(日本の6倍)できれば地図を1枚。
チベットの人は死を恐れない。生きるために神仏に祈るのではなく、祈るために生きている。
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トレジャーハント
桃源 黒川博行
トレジャーハントへの出資詐欺を追いかける大阪府泉尾署の刑事新垣と上坂。いつもながらに地名と説明の書き込みが半端じゃないので、大阪人である私はニンマリしっぱなし。それでいて、肝心なところは特定されないようにアバウトにおいてある、職人技ですね。
蛇足 大阪に泉尾と藤井寺は存在しますが、大阪府警に泉尾署と藤井寺署は実在しません。